世界との出会い75(ポピュリズム)
⚫︎『ポピュリズムとは何か』水島治郎 (中公新書 2016年)を読む。新書の平均的な頁数内で、かなり詳しく世界のポピュリズム的特性を持つ政党を分析した本。
⚫︎南米でも、西欧諸国でも、米国でも、日本でも、カリスマ的な指導者に率いられたポピュリズム政党が、「置き去りにされた人々」、「忘れ去られた人々」の不満や批判や思いを拾い上げて勢力を拡大している。
⚫︎世界の多くの場所で、よく似たことが起こっているのには、共通の原因が考えられる。原因は、特殊的なものと普遍的なものがあるだろう。特殊的なものとは、いわゆる政治的・経済的なグローバル化である。これは、空間的には、世界規模であるとは言え、21世紀という時代に限定されている故に、特殊的である。普遍的原因というのは、人間の、取り分け、「置き去りにされた人々」の、言わば、生物(学)的な最低限の諸欲求が満たされていないと言う点である。そして、これら二つの原因は分かちがたく結びついる。簡単に言うと、全ての人間が、「尊厳ある生活」を送れていないという点が大きいのである。
⚫︎ポピュリズム政党は、「忘れ去られた人々」の不満を解消できるのは、自分たちだけだと主張するのだが、移民や異教徒の無条件の排除は、人々を更なる困難に導くのではないかと、懸念される。